字駄楽ト界

Life is a jest,

2018年マンガレビュートップ10 前編

よりにもよってワートリとHxHが同時に終わってもう泣きそう(12月初週執筆開始)

ほんっとワートリを二カ月連続刊行させて首壊させた編集は許さん。
しかしネームはできてる、と、(卒論の)構想はできてる、って似てないですかね。同い年で、そう言いながら、今も学部生やってるのが知り合いにいるんすけど。似てない? ああそう。

そんな訳で2019年も始まっちゃったし、たまにはブログっぽいこともやりたいので2018年に読んだマンガのリストからランキング形式でレビューしようかと思います。

よくある2018年ランキング!とか書いときながら北斗の拳スラムダンクが常に上位に居座ってるタイプの飛ばし記事ではなく、ちゃんと今年連載してるやつから選んでるぞ。

あと新しい試みとして、読んでる人の数で傾斜掛けてます。具体的に言うと名前検索したときのヒット数。

だってキングダムってマンガめっちゃ面白いんすよ!!!って書いても、知っとるわそんなん!!!!!!ってなるじゃん。

と言うわけで早速10位からスタート

10位 概念ドロボウ

概念ドロボウ(1) (アフタヌーンKC)

概念ドロボウ(1) (アフタヌーンKC)

いろんなスポーツマンガがある中で、あまりマンガ化されないスポーツもある。特に、「最上が決められている」ものと「動きが地味」なもの、そして「対戦がターン制」なものは面白い展開を描くのが難しいと思う。

黒子のバスケ作者の、ROBOTxLASERBEAM はそんな訳で短命に終わった。あれ、部長パー3でラウンド回れるんですか!、みたいな、会社を生きる上でも役立ったすげえいいマンガだったんだけどなぁ。

さておき、この作者はそんな生き馬の目を抜く連載マンガ界で、よりにもよって「ダーツ」を題材にしてエンバンメイズ全6巻を描ききった人だ。

ここでダーツという競技を考えてみよう。まず、動作が果てしなく地味だ。肘を固定し、矢を指で持って、的に向けてスッと投げる。なかなか水や氷のエフェクトを付けた超必殺技を描きにくい。
次に、この競技はお互い順番に投げる。だから「投げ矢(ラッシュ)の速さ比べか いいだろう」みたいな展開も発生しない。
極めつけに、全プレイヤーはボウリングで全部ストライク取ればOK、と同じように、当てるべき最適解が共有されている。

そう、「ダーツマンガ」を描こうとしても、やれることは全てダツDEダーツ で表現され尽くしているのだ。

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では、どうするか。

答えは、「主要人物は全員がミリ単位の精度でダーツを投げられるので、狙った的は絶対に外さない」というダーツそのものに対するちゃぶ台返しだ。これにはちょっとびっくりした。

ぶっちゃけダーツというより、ダーツがめっちゃうまい人同士のエスポワール号である。
弟(スタッツ60ちょい)にダーツのマンガだよって読ませたらプンプン怒ってた。

次作であるこのマンガにもそういう大胆さがいかんなく発揮されており、概念を盗むってどうするんだよ!という根本的な問いに、あれ液体みたいなモンだからスッて盗って瓶詰めしときゃ大丈夫よ、というおっそろしくシンプルな回答をぶん投げている。
全くP5の皆さんが知ったら膝から崩れ落ちるぞ。

そして何がステキかってタイトルの簡潔さだ。概念を盗むドロボウ、概念ドロボウ。そんな怪人が跋扈する街で、熱血新人警官(巨乳)と探偵(概念ドロボウ)がコンビを組んで、犯人を追い詰める!

単純明快で、面白そうで、いかにもマンガ的。いいじゃないこういうの。

9位 BEASTARS

今までさあ、それこそ神話からこの方、愛憎劇というか、人と人がぶつかり合うドラマって星の数ほど描かれてきたわけだけど、その登場人物はおおよそ人間の男と女(とその中間)しかなかったわけじゃない。そのそれぞれに、立場があったり、身分があったりして葛藤を抱え、ぶつかりあっていたわけだけれど、その組み合わせのなんと乏しいことか。

このマンガを読むとつくづくそう思う。

というのも、これまでにあまたの動物マンガ(映画なども含む)があったが、これほどまでに種族の差と、そして肉食獣の「食べ物」について真摯に描かれた作品はなかったように思うからだ。

けものフレンズ

だし、どうぶつの国はそもそも草食獣と肉食獣が手を取り合う理想郷を目指す話だ。ズートピアのニックもなんかジュース飲んでるだけで、かなり近いところまで行ったマダガスカル(友達が喋るステーキに見えるシーンは結構キテる)も結局スシで解決してる。

そんな中、この作品はそういう苦悩を懇切丁寧に描写する。何しろ一話が謎の肉食獣に食われる草食獣の話だ。

主人公のハイイロオオカミは、強靭な種族に生れながらも、その動物としての身体を、肉食の本能を毛嫌いしている。

草食獣にも草食獣の苦悩がある。例えばウサギの女の子は、種族自体が弱い存在だから、全ての人が嘘のような優しい顔で接してくれる。だから素顔を晒してくれる瞬間に焦がれるようになり、断らない女の子になった。

イヌは造られた種族としての苦悩を、ライオンは百獣の王としての苦悩を、パンダは食肉目クマ科でありながら草食で生きることの苦悩を、それぞれ背負っている。

そういう、それぞれの葛藤と欲求がぶつかり合って生まれるドラマ。今まで見たことがないものを見るためにマンガを読んでいる私みたいな読者にとって、これほど楽しいこともない。

話は変わるが「マチネとソワレ」に「アクタージュ」と、最近演劇マンガがハチャメチャ面白いのでこれにハマった人はその辺もチェックだ。

8位 バトル・スタディー

実は、今最もアナーキーで素でエグいマンガって、 これなんじゃなかろうかと思っている。

まず何がすごいってこれ、スポーツ漫画でありながらスポーツ漫画の文脈を、努力・友情・勝利的なものを一切合切無視してる。

どんなあらすじかと言えば、PL学園にあこがれていた野球少年が、PL学園に入学して甲子園を目指すという話。
え、王道すぎない、過激さのかけらもなくない?と思いかもしれないが、平成も終わるこのご時世に1巻目からこれだからね

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いきなりこんなウシジマくんみたいな画像貼り付けといてオススメっていうのもなんだが、そもそも横須賀に20年以上住んどきながら浪川大輔を知らずに会社でエイリアン扱いされた人間が、野球マンガを堂々とランクインさせてる時点でちょっとヤバい。

7位 不滅のあなたへ

ぼかぁね、聲の形読んでないんすよ。主人公の無自覚なクソ具合に感情移入できなくて。

でも、マルドゥックスクランブルのコミカライズを読んでて、特にのこのシーンあたりから、こいつ、出来る、と。

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ちゃんと登場人物をを殺せるマンガ家だ、と察してたわけですよ。そしてこのマンガを読むに、それは間違ってなかったと言えるわけです。

というか原作知ってるコミカライズで、え、めちゃめちゃおもろいやんってなったのってこの人と大須賀めぐみさんくらいだからね。

不滅のあなたへ」はまさにタイトル通りの作品で、不滅の主人公による世界見聞録だ。そして、主人公が不滅とはどういうことかといえば、周りの人々は成長し、老い、死んでいく。その中で主人公だけが、ひとり取り残されていく。取り残され続ける。その残酷さと美しさ。

主人公は世界の保存を目的とする装置で、命のないものは無条件に複製できるし、命を失ったものを自分の体にすることもできる。そしてその装置を破壊しようと、ノッカーという存在が立ちはだかる。ノッカーは、主人公から体と、記憶を奪う。そして、不死の存在を様々な人が利用しようとする。色々な人が、不死の主人公の周りを行き交う。

というのは一旦置いといて、ウラリス編のキャラデザ描いてる時作者がどういう種類のクスリを決めてたのかが超気になる。

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リーゼント+ドリルツインテ+チョビヒゲというハードボイルドすぎる髪型もさることながら、肩パッド+マントに王子風カボチャパンツとサイハイブーツを着こなして絶対領域(美脚)を見せつけてくる推定三十代の王子て。しかもなんだよあのラムちゃんみたいな髪のハイライトの入り方は。しかもドラクエの歴代クソ王子をまとめて煮詰めたあと砂糖1tほどブチ込んだような性格してんのにめっちゃ愛され系だし、不思議ちゃん(実際視えてる)だし、そんな野郎が一話限りのイロモノキャラじゃなくてウラリス編最重要キャラという事実。

いや飽きませんわー、ホント。

6位 ORIGIN

ORIGIN(1) (ヤングマガジンコミックス)

ORIGIN(1) (ヤングマガジンコミックス)

最新刊がね、もう。

あの、今、自分が一番好きな作品を思い浮かべてもらって、その作品の中には素晴らしい死に方をしたキャラっていませんでしょうか。
ワンピースは言わずもがな、ハリーのスネイプ先生、トライガンのウルフウッドにグレンラガンのカミナ兄貴。

素晴らしい作品というのは、絶対に死んでほしくない人が死ぬ作品だと、私は思っている。悲劇が大好きなのはそういう訳だ。

さてはてそんなわけでこのマンガについて書きますと、舞台はそこそこの近未来、日本に大陸間横断鉄道が敷設され、都市には経済発展と治安悪化が吹き荒れている。その鉄道を運営するのは会社はタイレル社をちょっとマイルドにした感じの超グローバル企業で、交通網に飽き足らずおはようからおやすみまで世界中の技術を一手に掌握している。

にも関わらず、主人公はそんな社会ですらオーバーテクノロジーのスーパーアンドロイドだ。彼は人間と全く区別がつかず、完璧以上の受け答えができ、めちゃくちゃ強い上に自分をより強く改造することも出来るし、片手間にエロ漫画を描いて印税を得ることも出来る。

彼の名はオリジン。そして原初の名が示す通り、彼の他に製造されたスーパーロボは、他にも存在する。彼らと、その周辺の人が織りなす「ヒューマン」ドラマ。

それと、この作品内のSF感というかAI像がたまらなく好きで、例えば、進歩したAIは人間を滅ぼすか、という問いに「人間は打破すべき旧支配者などではなく、良質な畑のようなものだ」という。
電機系中小企業の専務を務めるおじさんは、これまでの生活を捨て、「彼の他に製造されたスーパーロボ」勢の為に半グレとの闇取引に精を出すが、何故そんなことをするのか。

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これだよ。この、別の世界の常識が確かに存在するこの感じ。SFの醍醐味ですよ。

さらにこの作者はJUMPでDr.STONEを週刊連載しながらこれ描いてる猛者である。全くすげえ。

と言うわけで10-6位でした。後半へ続く。